ブームになってから相当して買ったのに、その後今までほぼ手付かずだった本書、ようやく一巻を読み終わった。のが2023/10頃。

なかなか読み始められなかったのは、この本の始まりが、文革の糾弾シーンという重い感じから始まるせいだというのもあるかもしれない。


「中国初のベストセラーSF」という以外の事前知識以外はなかったが読み始めると、現実世界で何か大変な異変が起きて対処したり思い悩んだりした後にVRゲームを始めて、そのシーンの描写が妙に長くてどうやってこの広げまくった風呂敷を畳むのだろうと心配にすらなってしまった。

 この文革シーンに限らず、三体ではサイドストーリーにも見える一エピソードが妙に長い。これが話の筋に重要な影響を与えているのかと言うと、確かにこの文革のエピソードに出てくるなぶり殺しにされた物理学者の娘が後に三体前半ではそれなりに重要なポジションにいるが、彼女が生きているのは全体の前半分くらいしかないので、そうなるとこの文革のシーンはこんなに長々と語る必要があったのかとも思う。

尤も、三体の話の骨子が4光年先の高度な文明を有する世界が0.01光速で地球に攻めに来るという話ではあるが、地球の危機は400年先ということになり、一応冷凍冬眠は実用化されている世界ではあるが、一人の主人公を一貫して活躍させるというのはなかなか難しいだろう、というのは理解できる。

地球の危機が400年先に来るということが世界中で認識されても、先過ぎるということもあるので、世界はそれなりに右往左往するのだが、現実世界の混乱っぷりをみるとこれは結構整然と動いている方なんじゃないかと思う。作者は科学技術も世界動向も比較的公平な目線で見ているとは思うが、やはり中国共産党政府の統治下だと世界は上位下達的にある程度合理的に整然と動くんじゃないかと思っているのかもしれない。(逆に共産党や地方政府の腐敗っぷりを見ているからこそ、民主国家はもっと合理的に動くはずだ、という思いもあるのかもしれないが)やはりここはレオナルド・デカプリオの主演していたNetflixの「Don’t lookup」の方が現実に近いのかもしれない。

ただ全体的に作者の科学や技術に対する博識っぷりはものすごく、巷間関心を持たれるようなものはたいていどこかで取り入れられたりする。太陽増幅器みたいのが今まで語られたことがあったのかどうかはわからないが。

話のレンジが数百年に及ぶこともあって、特定の人間のストーリーにはなりにくいため、小説と言うよりは架空の歴史書といった趣だ。なので、シリーズ最後まで読むとまあバッドエンドなのだろうが、それすらも歴史書の一ページといった趣だった。

あんな結果になって続編が作れるのかはわからないが、あったらそれはきっとまた面白いものになるかもしれない。

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