映画「ドリーム」 ― コンピュータがまだ人間だった頃

映画『ドリーム(Hidden Figures)』を見た。

もともと実話に基づいた作品が好きだが、この映画は特に印象に残った。華やかな宇宙開発の裏側で、ロケットの軌道を“手計算”していた黒人女性たちの物語。彼女たちはNASAの一員でありながら、当時は「colored computers(有色人種の計算手)」と呼ばれていた。

このエントリのタイトルにある“コンピュータ”とは、機械ではなく、人間そのもののことだったのだ。

続きを読む映画「ドリーム」 ― コンピュータがまだ人間だった頃

映画「フィガロに恋して」──ただのラブコメじゃない?

先日観た映画「フィガロに恋して(原題:Falling for Figaro)」。

表向きは“キャリアを投げ打って夢を追う女性と恋の行方”という軽快なラブコメですが、実際に観てみると、ただの恋愛映画ではありませんでした。

なぜならこの作品、随所に流れるオペラの名曲が物語を動かしているのです。

マックスが歌う「フィガロ」は本当に《フィガロの結婚》なのか? ラストで選ばれた《ドン・ジョバンニ》の二重唱にはどんな意味があるのか?

──この選曲をたどると、実は映画の裏に“オペラ史の縮図”が隠れていました。

ここから先は、フィガロ三部作やモーツァルトのダ・ポンテ三部作と絡めて、この映画をもう少し深く見ていきます。

続きを読む映画「フィガロに恋して」──ただのラブコメじゃない?